小児科外来診療料:¥1,100の壁
当院ではマルメ(包括)と言われている「小児科外来診療料 A(3歳未満:1日につき)」を主に採用しております。
※詳しくは右記をクリック 3歳未満の医療費:包括と出来高
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@処方せんを交付する場合
(院外処方せんを発行) |
A @以外の場合
(院内で調剤の場合) |
初診時 |
572(¥5,720) |
682(\6,820) |
再診時 |
383(\3,830) |
493(¥4,930) |
この点数を比べてみてください。調剤薬局でお薬をもらった場合とクリニックでお薬をもらった際の差は110点(¥1,100)です。この¥1,100円分が院内で薬剤料金と徴収できる金額だと考えられます。
※月初めの最初の受診時に調剤方法を「院外」、「院内」に決めるとその月はずっとそのままになります。
当院にとっては過剰だと思われますが下記内容はよく一般にみられる調剤例です。
メイアクトMS小児用細粒10% 100mg 0.9 g 17 x 7
キプレス細粒4mg 1 包 19 x 7
アスベリンシロップ0.5% 5 ml 1 x 7
ペリアクチンシロップ0.04% 5 ml 1 x 7
ムコダインシロップ5% 5 ml 3 x 7
ホクナリンテープ0.5mg 7 枚 27
アルピニー坐剤100 5 個 10 計324点
これって計算すると薬剤にかかる費用差額¥1,100をはるかに超えておりますね(^^;)。巷で見られるヒルドイドローション250g処方なんて592点(平成28年3月以前はもっと高くて¥6,300程度)。
当院のように「小児科外来診療料かつ院内調剤」を採用している当院ではこんな処方していたら利益がでるどころか、薬を手渡せば手渡すほどどんどんこちらが赤字になってしまいます(^^;)。
ふと考えてみると包括方式の「小児科外来診療料」の意義ってなんだったのでしょうか?
私の記憶によれば20数年前に始まった制度(会計方式)です。それ以前は小児科は勤務医も開業医も今と違って冬の時代。小児診療の保険点数もそれほど高くはなく、今のように簡単で子どもに負担が少ない?感染症迅速検査もほとんどありませんでした。検査は暴れる子どもを抑え付けて静脈血から採血が主。さらに小児薬用量の計算が面倒、ほとんどの小児科医院が院内調剤だったので追い打ちをかけるように薬を作ることがとても面倒、しかも量も少ないので薬価差益も稼げない。
小児科が収益をあげようとすると嫌がる子どもに血液検査し、薬剤もばんばん出すしかありません。こんな理由で病院もクリニックも良心的な小児科の多くが喘いでおりました。これを救うため、そして無駄な検査や無駄な薬をなくすために創られた制度だったはずです。
マルメを採用していた昔の小児科開業医達は、この差、すなわち110点(¥1,100円)前後の薬剤を分包手数料を含めて院内でお薬を手渡してました。
このおかげで小児科開業医達は抗菌薬を適正処方し、本来は発作時だけに対応すればよい喘息もどき?(wheeze)の患者さんに高額な気管支喘息薬の長期投与も躊躇していたはずです。
ところが今や多くの小児科開業医は薬局と隣同士での開業、推測で申し訳ありませんが80〜90%は院外処方。
院外処方せんの場合は、差額¥1,100に抑える必要がないために高額な薬をばんばん処方しても医療機関側にはなんの損失も受けません。薬手帳で他医療機関の処方内容を確認するとまったくコストを考えていない処方内容に呆れるやら、羨ましいやら。
※ここ2〜3年前からレセプト電子化でクリニック側から申請された病名と調剤薬局が渡した薬剤を突き合わせて点検が行われようになりました。それまで小児においては院外処方せん絡みの薬剤に監視の目が行き届かず一部ではとんでもないザル処方が横行しておりました。
院外処方率が一気に上がった現在では「小児科外来診療料」、主に「@(院外)処方箋を交付する場合(院外処方せんを発行)」は制度疲労、いや破綻を起こしており、この存在価値は失われたも同然かもしれません。
院外処方だと医療費が分散してしまいトータルで見えてこないのでどんなに高い医療費かがわかりにくいのです。このマルメ(包括)方式を今後も維持するには小児をみる医師達の自覚が必要でしょう。
※申し訳ありませんがキプレス・シングレアの長期投与、ヒルドイドの大量処方等が必要な患者さんは「@(院外)処方箋を交付する場合(院外処方せんを発行)」で対応させて戴きます。なお、そのような患者さんでも保険請求できずに当院の持ち出しになりますが整腸剤や解熱剤等の簡単で安価な薬剤は患者さんの便宜をはかるために院内でお渡しすることもあります。
まだ書き直します。
(2016年4月記)
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